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コレステロール低下薬の最新の知見、新しいデーター、新しい疑問

論文で紹介します

Recent cholesterol-lowering drug trials :new data, new question
コレステロール低下薬の最新の知見、新しいデーター、新しい疑問
Michel de Lorgeril Joseph Fourier-Grenoblel1大学
J.Lipid Nutr .vol.19,1(2010)

2008年―2009年に発表されたコレステロール低下薬は効果なし(ENHANCE, SEAS, GISSI-HF, AURORA)か明らかに偏向しており、信頼のおけない(JUPITER)研究になっています。私達はこれらのコレステロール低下薬が効果なしという結論を、どう説明できるのだろうか?この論文で、著者はこれらの研究を再検討しまとめて、これらの最新の研究結果についてコメントします。

同時に、重要なことは2005年から2007年にかけて発表されたコレステロール低下薬研究のほとんどが、効果に否定的もしくはあいまいなものだったことです。

2005年にバイオックス事件(訳注下)があり、臨床研究について新しい規制が強化されています。

(訳注 バイオックス事件・・・製薬メーカーメルク社が鎮痛薬バイオックスの副作用を知りながら販売し、心筋こうそくなどで死亡者が出た事件。この事件の裁判(3万件)でメルク社が論文の著者をゴーストライターにしているなど多くの意図的な情報操作があり、これらの事を防ぐため、FDA(アメリカ食品医薬品局)が規制を強化したもの。その内容として@臨床研究の宣言の義務化(研究を始めたということ)、A研究の結果がその薬の効果に好ましくない場合でも公表すること、の2点になっています。)

これらのことをいっしょにして考えてみると、2008年〜2009年の研究も含めて、最新の研究が示していること(2005年〜2009年)は、以前の研究(2004年以前)がスタチン(コレステロール低下薬)に関して高い効果を示した研究が、(特に冠状心臓病の2次的予防に効果を示し)医療関係者のガイドライン作りの基になった。それらの研究を慎重に、製薬業界とは独立した専門家によって、再評価されるべきであることを示している。

(訳注 現在のガイドライン‐例えば総コレステロール値220以下という様なガイドラインの基になった1994年〜2004年にかけての、コレステロール低下薬の高い効果を示した論文に疑いがあり、それらの研究を製薬業界とは独立の(無縁の)専門家で再評価すべきだと言っています。2005年に臨床研究規制の強化があり、それ以後の論文の結果ではコレステロール低下薬の効果が否定もしくはあいまいだからです。)

次の疑問点は、コレステロールを低下させることが心血管病(死)の予防につながるという理論を再評価すべき時なのかどうなのかという点です。

(訳注 総コレステロール値について、260程度の方が長生きだとする論文もあります。現在のガイドラインの基準値220以上の人は日本人でも40%もおり、本当に病気なのかという疑問が残ります。)

解説

もし、製薬会社が会社に不利な試験薬の効果を発表せず、効果ありの論文だけを発表していたら、どういうことになるのか、今回の論文はコレステロール低下薬にその疑いがある、といっています。日本では、男女問わず、コレステロール値が高い人は、コレステロール低下薬を処方されていますが、これは日本だけで、アメリカ・ヨーロッパでは処方されるのは男性だけです。コレステロール低下薬には副作用があります。(筋肉が衰えていく病気「私は薬に殺される」福田実著 幻冬舎刊)遺伝的な高コレステロール症の人についてはわかりませんが、動脈硬化の原因は、酸化したコレステロールであり、タバコなどの影響が強いのです。

(伊澤)

(2011/4/7 掲載)